2018.01.26

産学官連携による食品安全専門人材育成の推進

表彰式に出席された来賓、受賞者の皆さま 賞状を授与される宮下CR本部長

1. 産学官連携による食品安全専門人材育成の推進

 食品業界では、世界的に食品安全の規制強化と民間規格による食品安全管理の標準化が進んでおり、10年、20年前に比べて、事業者における食品安全管理に必要な知識が格段に増えています。今後、食品産業の発展のためには、食品安全に関して産業界で必要とされる基礎的な知識を有する人材の確保と、安全管理についての国際的な議論に参画できる人材の確保が大きな課題となっています。

 このため、農林水産省は、「産学官連携による食品安全専門人材育成」を進めていくこととしました。また、国立大学法人鹿児島大学(以下、「鹿児島大学」という。)、日本マクドナルド株式会社(以下、「日本マクドナルド」という。)及び一般財団法人食品安全マネジメント協会(以下、「JFSM」という。)も、この取組に賛同し、協働していくこととしました。

 さらに、今回、この取組の一環として、鹿児島大学での食品安全管理の教育カリキュラムの開発に、この四者並びに鹿児島県及び株式会社三菱総合研究所も含め、協力していくこととします。

 これを皮切りに、産官学連携による食品安全専門人材育成の体制・仕組みづくりを推進します。

2. 具体的内容

(1) 産学官連携による食品安全専門人材育成推進の内容

 現在の食品産業の状況、世界の食品安全を巡る情勢を踏まえ、食品産業界で必要とされる食品安全専門人材の育成をしていく体制・仕組みについて、関心のある全国の大学等の教育機関、食品産業界が集まり、議論をしていきます。

 平成30年度から議論を本格化していきますので、御参加を希望される大学等におかれては、下記連絡先に御連絡ください。

(2) 鹿児島大学における教育プログラムの開発

  1. 食品安全に係る専門人材を育成するための教育プログラムを協力して開発し、鹿児島大学において平成30年度前期のコマとして授業を開始・実施を目指します。
  2. このプログラムの一部では、日本マクドナルドによる講義を行うとともに、将来に向け、JFSの監査員研修コースを組み込み、受講者にはその修了書が交付されるようにしていきます。
  3. 農林水産省は、鹿児島大学の教育プログラムの開発、実施に当たって、行政関連情報、食品安全に関する世界の情勢、規格・認証等に関する情報の提供、講師の紹介等の協力を行います。
    また、鹿児島大学の教育プログラムも活用しながら、今後の食品安全専門人材の育成のための教育プログラムの実施の拡大と標準化を目指すための議論の場の立ち上げを検討します。
  4. JFSMは、鹿児島大学における教育プログラムの開発及び実施に当たって、求められる力量、国際的な情勢等の情報、監査員の研修コースの承認基準等を示すとともに、講師派遣等の協力を行います。
  5. この他、鹿児島県は、食品安全に関する行政関連情報の提供や講師派遣、食品等事業者に対する情報提供の協力を行います。また、株式会社三菱総合研究所は、教材作成支援や全体の進捗管理などの協力を行います。

参考

1. 食品産業をめぐる状況と課題

(1) 食品産業をめぐる世界の状況

 世界の食料需要は増大が続くと見込まれている一方で、食の生産・製造・流通を貫くフードチェーンはより長く、複雑化しています。これにより、食料供給に伴う環境負荷は高まるとともに、いったん食品事故・事件が発生した場合の影響は非常に大きくなっています。また、微生物による食中毒の発生状況も変貌し、食品安全リスクを増大させています。

 このように増大する食品安全リスクに対応していくには、国際的な協調・協力を前提として、各事業者が食品安全管理を高度化していくことが必要不可欠となっています。

(2) 食品産業をめぐる日本国内の状況

 日本では、人口減少・高齢化等による国内市場の量的縮小等の課題がみられる一方で、新興国の経済発展に伴う海外市場の拡大等、新たな価値創造の機会も期待されています。これを踏まえ、日本の食品産業では、国際競争力を高めるため、食品産業を担う人材育成を効果的に実施し、産業を支える人材資源を強化していかねばなりません。

 現状では、食品安全に関わる人材育成は、企業内のOJTが中心で、教育機関で専門家を育成する諸外国の体制とは異なります。一方で、食品産業で必要とされる品質管理・安全管理は、大きく変化し、高度化しています。

(3) 日本の食品産業を支える人材育成についての課題

 これからの食品産業で効果的・効率的に人材育成を進めるには、企業で必要な知識と教育機関での教育内容とが、整合性を持ち、教育機関で専門性を有する人材育成の一端を担って産業界に輩出していく体制を構築する必要があります。そのための、教育機関での本格的な教育プログラムの提供が求められています。

2. 本取組に関する問題意識

 4者は上記の課題意識に加え、それぞれ以下に示す問題意識を持ち、協働・協力を進めていくこととしました。

(1) 農林水産省

 農林水産省は、日本の食品産業の基礎的な力の強化、国際競争力の強化、また、世界の食品産業における安全管理の向上等への貢献のため、食品安全専門人材の育成が急務と考えています。また、食品安全管理の産業内でのコストの最適化、効果的・効率的な人材育成のため、関連する業界で整合性のある、標準化された教育が提供されることが重要と考えています。

(2) 鹿児島大学

 鹿児島大学は、地域の人材育成について中心的な役割を果たしていく使命があります。地域の経済においては、食品産業は重要な産業であり、今後海外を含めた発展、展開を支援していく必要があります。一方で、食品安全リスクや管理手法等に関する情報は、地域間で格差があり、大学として、産業界や行政関係の最先端の情報を入手し、人材育成に反映させていく必要があります。

(3) 日本マクドナルド

 日本マクドナルドは、消費者に安全で安心できる商品を提供するために、原材料のサプライヤーを含め、世界で標準となっている食品安全管理項目を含む、自社の品質マネジメントシステムを実施しています。一方、食品安全管理への要求の高度化、商品の多様化、人材の世代交代等の状況の中で、今後品質管理を国際的な整合性を維持しながら続けていくためには、より多くの、また高度な食品安全専門人材を確保していくことが急務となっています。また、外食業界の世界的なリーダーとして、国際水準で求められる食品安全管理の考え方や手法を日本国内の人材育成に反映させ、日本の食品産業界に貢献するとともに、将来的に現場で求められる高度な専門人材を確保していくことも重要と考えています。

(4) JFSM

 JFSMは、JFS(Japan Food Safety Standard;食品安全マネジメント規格)の認証及び適合証明を普及させ、食品関係事業者の食品安全管理の向上、標準化を目指していますが、その普及においては、審査員、監査員の力量向上と数の増加が必須と考えています。

3. 他組織の協力

(1) 鹿児島県

 鹿児島県からは、鹿児島大学の教育プログラムの実施に当たり行政関連情報の提供や講師の派遣、食品等事業者に対する同プログラムに関する情報提供を協力いただきます。

(2) 株式会社三菱総合研究所(以下、「MRI」という。)

 MRIからは、教育プログラムにおけるカリキュラムや教材の作成支援等を通じて本取組とJFSとの整合性を確保し、本取組を効率的に進められるよう、全体の進捗管理に協力いただきます。

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