STORY#108

一人ひとりの努力から生まれた
世界の手本となるバンズ

2025.04.25埼玉県

POINT
  • ・バンズのサプライヤー、株式会社イナベーカリーのプロフェッショナリズムに迫る。
  • ・米国監査のシステムを日本で初めて導入。非常に厳しい異物混入施策も実施。
  • ・毎日一番おいしいバンズを届けるために、微調整を欠かさない。

全国約3,000店舗のマクドナルドを陰で支えているのが、様々な食品を届けるサプライヤー企業です。マクドナルドでは商品の安全性に加え、品質やサステナビリティを高めるために数々の基準を設定。その厳しい基準をクリアした各社の努力の結晶が各店舗へ届けられています。

そんなサプライヤーの皆さんはどんなプロフェッショナリズムをもち、どんな想いで生産や加工に取り組んでいるのでしょうか。今回はバンズを供給する、株式会社イナベーカリーの尾末さんにインタビューを行いました。

国内に衛生監査機関がない時代から続く
食品安全への強い想い

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機器の状態に身だしなみなどチェック項目は多岐にわたり、もちろんバンズの品質管理も厳しい

1996年の設立以来、バーガーのバンズと朝マック®用のイングリッシュマフィンを手掛けている株式会社イナベーカリー。当初から食品安全に対する意識は非常に高く、外部監査を取り入れて厳重なチェックを行ってきました。

「現在は、日本パン技術研究所(JIB)の衛生監査システムで食品安全の取り組みを強化しています。ただ設立当時は衛生管理システムに関する国内機関が確立されておらず、米国製パン研究所(AIB)に依頼していました。私の知る限りでは、食品工場におけるAIB監査の導入は当社が日本で初めてです」

食品安全に関わる監査項目は多岐にわたります。工場内のチェックをはじめ、食品安全に関わる仕組みすべてが正常に機能しているのか、監査官が厳しい目で審査するのです。

「例えば、製造機器のメンテナンスや清掃は正しい方法で、なおかつ適切な頻度で行われているかという項目について、その根拠や実施手順、実施した記録も問われるのです。グローバルのAIB監査を受けていた当時、一般的には1,000点満点中700点以上で合格となりますが、当社では独自に900点以上でなければ不合格という厳しい基準で運用していました」
イナベーカリーでは、その監査を年に2回実施。そのうち1回は抜き打ちで行い、厳格な衛生管理体制を一層強固にする運営を行っていました。
そして、JIB監査となった現在もその意識レベルを変えることなく、食品安全の向上に取り組んでいます。

衛生管理の専門部隊
フードハイジーンセンターも活躍

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尾末さん。品質管理課で、課長を務めている

食品の安全性をより高めるために、同社が設けている組織がフードハイジーンセンター。25名在籍の同部署が衛生管理専門部隊となって、日々の指導などを行っています。

「清掃などに用いる薬剤や洗剤等はすべて品質管理課で登録し、安全データシートを含めた法的必要事項を満たした管理を実施。掃除機やブラシなど各種清掃用具の掃除も徹底しています。異物混入防止という点では、例えば絆創膏(ばんそうこう)は目立ちやすい青色で金属検出機対応品のみ使用可。また、作業着の下に着るアンダーウェアでもボタン付きはNGですし、繊維が出やすいので毛糸素材も着衣不可です」

また、工場内の手洗い水温は38℃以上に設定。その理由は油分を落としやすい温度であることに加え、冬場の水が冷たい時期でも手洗いが大変にならないようにという従業員ファーストの側面もあるそうです。

※薬品の成分や使用時の注意事項などが記載された、安全に取り扱うための説明書

パウダー状の小麦粉を
目と手と機械で検査

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機械だけに頼らず、目視で細かく検査することも大切

バンズやイングリッシュマフィンにとって、大切な原材料のひとつが小麦粉。株式会社イナベーカリーでは小麦粉の状態から細やかな管理を実施し、人の目と機械を使って高いレベルの食品安全の維持に努めています。

「小麦粉の食品安全維持の取り組み例としては、使用直前に全量をシフター(ふるい)に通して異物を排除する仕組みはもちろん、その機器自体に異常がないかも毎時点検を実施。また、この工程で取り除かれた異物があった場合は、すべてその場で拡大鏡を用いて目視確認するとともに、品質管理課でも白い紙の上に広げて人の目で調べるというダブルチェックを行っているんです。もし問題が見つかれば、対象物をピックアップして関連各署に報告。調査を実施し、適切な対処を速やかに行っています。その他の原料についても手法は違えども、こうした細やかな作業を担当者一人ひとりが日々責任をもって行っています」

焼き上がった製品も、金属検出機とX線検検査装置を使って異物は徹底的にブロック。さらに、焼き色など見た目にイレギュラーなものがあれば、すぐ取り除きます。他にも、頻度を決めて内層や規定通りにスライスされているかなど、細かい状態まで確認し、安全で高品質なバンズだけを届けています。

「取り組みについてお話しすると『ここまでやるんだ』と言われることも少なくありません。しかし私たちからすれば、安全を徹底して当たり前。大前提に食品安全があってこそ、当社への信頼とおいしさにつながると考えています」

1時間で約6万個のバンズを
一番おいしく焼くために日々調整

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環境によって焼き上がりは変わるため、色味は見本と比べながら確認

バンズやイングリッシュマフィンの生地は温度や湿度によって変化します。だからこそ、同社では変わらないおいしさを届けるために、季節ごとに水分量や醗酵室、オーブンの設定などを微調整。常にその時ラインに流れている製品を確認しつつ異常がないかを確かめています。

「冬は製品の乾燥が早く、梅雨や夏には細菌の発生リスクが高くなります。そういった影響を常に念頭に置き、醗酵室内やオーブンの温度、ミキサーの冷却装置まで細かく調整ししているのです」

最終製品は製造課と品質管理課が、食感や風味などの官能検査をはじめ様々なチェックを実施。安定した高品質を維持すべく、日々努力を続けています。

苦労する点を伺ってみると、微調整は的確かつ迅速に行わなければならない点だと教えてくださいました。

「最も生産スピードの速い種類のバンズは、1時間に約6万個を生産します。わずかな対応の遅れで大量の製品に悪影響を与えることになるため、高い生産性を維持するためにも正確かつスピーディに日々の調整を行うことが重要なのです。まさに“プロフェッショナルのなせる業”といえると思います」

マクドナルドのバンズ工場は世界中にありますが、同社はアジア地域における理想的なクオリティと評価され、バンズ生産における認定サプライヤーになりました。認定サプライヤーで生産される製品は“手本”として、サンプルが各国に送られることも。そんな素晴らしいバンズとイングリッシュマフィンは、今日も株式会社イナベーカリーで働く一人ひとりの努力のもと焼き上げられています。

登場した人/会社
株式会社イナベーカリー
活動内容
バンズの製造

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